勝利して優勝の可能性を残したのに悔しがる後藤洋央紀に変化を感じた

LA道場で修行し、ジェイホワイトにリベンジするもそれ以降は連敗。
しかし怒涛の巻き返しでG1優勝への可能性を残したまま終盤戦まで生き残っている荒武者・後藤洋央紀。

大阪大会では怪力ジェフコブに追い込まれるものの、進化したスピードと打撃&それでいて維持したパワーを武器に終盤で畳み掛けて勝利し今年のG1で4勝目を手にしました。

そして、いつもの後藤であれば誇らしげに勝ち名乗りを受けて花道を下がっていく...はずなのですが、この日の後藤は違いました。

勝利しているのに花道を戻り姿を消すまでずっと"悔しそうな顔"で、時に頭を抱えるような仕草まで見せていたのです。

本来なら堂々をした姿を見せないといけないのかもしれませんが、私はこの『後藤が勝って悔しがる姿』にこそ修行の成果を感じました。

柴田が語ったばかりだった牛殺し式GTRの精度と失敗

勝利してここまで落ち込む理由は牛殺し式GTRの失敗が原因だったのでしょう。
実際にこの技を発動した直後に、フォールを躊躇ってしまうぐらいに不完全だったことは映像で見ているファンが全員気付いてしまうものでした。


この牛殺し式GTRについては柴田選手が「精度を上げればフィニッシュ技となる可能性を秘めている」とインタビューに答えた直後の試合でこのすっぽ抜けですから後藤選手としては痛恨のミスだったのでしょう。

ジェイホワイト戦では初見のインパクトなどもあり、ファンの多くが「これを必殺技に!!」と願いました。
ただそれ以降は不完全な形で決まることが目立っていますので、現状では確実なGTRをフィニッシュにするしかないのかもしれません。

ただ、長年の後藤選手のファンであれば「ん?」と思うような試合でも勝利すれば自信満々で喜ぶ姿を見てきているだけに、試合後にここまで肩を落としている勝者後藤の姿はあまり見たことがなかったはずです。

だからこそ、この姿こそが後藤の進化だと思いますし「現状に満足してない」という原動力になるのではないかと思います。

後藤洋央紀最大の欠点は「スランプから復活して1つ勝利すると大満足」することでしょう。
そしてそこからすぐにまた落ちていくという過去を何度もファンは見てきました。

しかし今回はG1で4勝3敗と勝ち越した重要な試合に勝利して落ち込んでいたのですから、これは後藤に足りなかった唯一のモノを手に入れたと前向きに考えることができるはずです。

試合後には「技の精度」というワードが素直に口から出ていましたが、ここから重要なモクスリー戦・真っ向から戦える鷹木戦を経て優勝決定戦まで駒を進めることができれば、そこで最高の完成形"LA"荒武者を見せてくれるのではないでしょうか。

ピークを優勝決定戦に持っていくのは難しいことかもしれませんが、肩を落とす荒武者に後藤洋央紀の過去最大の強さを感じましたので・・・可能性はあると思います。

落下する相手への技の難易度が伝わるミスはスポーツとして見たときに重要なことだったのではないか

多くのスポーツや格闘技では解説であったり後の試合回顧などで「良いプレー」だけではなく「悪いプレー」について語られます。
この悪いプレーの解説というのはとても重要で、それがあるからこそ良いプレーが際立つとも言えますし悪いプレーの解説があるからこそ技術論が成立するわけです。

ただプロレスというジャンルでは「ほぼ全てが100%」というように語られてしまいます。

しかしそれでは、プロレスを知らない人に足して「所詮1ファン」がプロレスを紹介して広めていくことの障害になるのではないかと思うのです。

なぜこの技が凄いのか、なぜ今選手が凄いのか、なぜこの試合のこの技が盛り上がったのか、等など「比較する対象がなければただ全てを絶賛しているだけ」になってしまうわけですから競技としての魅力を伝えるには適していないわけです。

もちろん単純にゴツい男たちがぶつかり合うだけでも凄いのがプロレスなのですが、それだったらボディービルダーでもできてしまいます。

でもボディービルダーや一般人のゴツい人とプロレス・プロレスラーは全然違うんだよと伝えるのが「プレー」であるべきですよね。

例えばこの後藤洋央紀選手の牛殺しGTRにしても、棚橋選手が初披露で失敗して封印状態の裏スリングブレイド(変形のファイナルカット)のような技にしても『なぜ新日本プロレストップの2人が失敗したのか』という部分はプロレスをスポーツ的な競技として人に説明するに当たっては最高の材料だと思います。

 

この2つの技は落下する相手に対しての攻撃ですが形は少々違います。

棚橋選手の技は相手と背中合わせのような状態で相手の首を掴み、回転して振り返りざまに相手の首の辺りに腕を当てつつリングに叩きつける形でした。

当然重力がありますので振り返る前に相手はリングに向かって倒れ込んでしまいますので、そのタイミングが合わずに空振りに近い状態になったわけです。

後藤選手の牛殺し式GTRは相手を肩に担いでそこから持ち上げてリングに叩き落とす間に首にラリアットのような形で腕を入れる技ですが、昨日でいえば120キロあるジェフコブが落下していく速度に対してそれ以上のスピードで腕を振り下ろさないと当然間に合わないわけですが、そのタイミングとスピードがズレたことで空振りになってしまったように見えます。

この2つの材料だけでも、プロレスファン目線で見れば「落下していく相手への技は難易度が高い」と考えることができますし「だからこそ、決まった時の威力が高い」という知識になると思うのです。

これがあることで、今後牛殺し式GTRが完璧に決まった時にはその威力や価値がファンに突き刺さると思いますし、繋ぎ技ではなくフィニッシュ技になっていく期待感が増します。

現状では牛殺し式GTRの後にGTRで勝利するという形ですので「牛殺し式GTRでは威力が足りない」という印象を作ってしまっていますが、一発で勝利した時に「精度が増して印象が上がったんだ!」と説得力が出るはずです。

ミスが目に見えるからこそ説得力が生まれるというケースはプロレスの世界ではあまりない例ではないかと思いますが、それをこのG1で後藤洋央紀が見せていけば天下取りがきっと実現できると思いますし、その一連の話をファンはプロレスを知らない人に語りたくなるのではないでしょうか?


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