新日本プロレスのジュニアを背負ってきたKUSHIDA。
今の新日本プロレスを退団して海外へ行くというのはリスクもありますが
それでも行くというのですから並々ならぬ決意があってのことでしょう。
そして新日本プロレスでの最後の試合、対戦相手は初対決にして
現在のIWGPヘビー級王者の棚橋弘至。
このカードが決まった時に思ったのが、ベスト・オブ・ザ・スーパージュニアでの
KUSHIDAとSHOが見せた「あの日の新日本プロレス」のような試合です。
新しいファンの人には伝わらないかもしれないですが
もしそれで伝わるなら凄いこと。そういう試合をするのではないかと。
そんな予感は期待を大きく上回りました。
手四つ、グラウンド、ロックアップで歓声が上がる
昔の新日本プロレス、いやそんな昔ではなく90年代~2000年代前半までは
プロレスというのはじっくりとしたグラウンドでの攻防を見せてくれました。
そして徐々に試合の流れが早くなりフィニッシュに向かっていくという
1つの物語がプロレスの1試合の中にありました。
今の試合開始からハイスパートな試合も面白いですし
やはりケニーオメガのような試合というのはテンションが上ります。
ただ、侘び寂びのような物、そして1つの試合の中で生まれる物語というのは
最近の新日本プロレスの試合からは無くなっていました。
プロレスはお客様との戦いでもあるはずですから、当然ウケが良いことをするのは
プロフェッショナルとして当然のことだと思います。
なので全く反応がないのにそんな昔のプロレスをしていたらプロじゃないとも思います。
が・・・何だか懐かしいこのシーン。
ブリッジを潰そうと相手が乗るという懐かしいシーン。
これが2019年のリング上に出現した時、映像からは歓声が聴こえました。
ここからもインディアンデスロック、トーホールド、キーロック、レッグロックなど
1つ1つの攻防に歓声とどよめきが起きていたので・・・そこで涙が出てしまいました。
もうね、KUSHIDA選手の試合後のマイクのときには逆に泣けなかったです(笑)
この手の攻防、懐かしいというか「新日本プロレスの1つの姿」で湧いた歓声の理由が
「最近のファンの人には珍しい光景だったから」なのか「棚橋弘至とKUSHIDAが凄いレスラーだから」なのかは
僕には正直わからないですし、人それぞれ違うのかもしれないとも思います。
ただ、これを2019年に見せた、いや魅せたという事実はかなり大きい事実として
多くのレスラーに影響すると思いますし、兎に角派手でハイスパートな試合を
新日本プロレスで披露して人気を得たケニーオメガやヤングバックスなどの選手が
新日本を去ったこのタイミングで、また新日本プロレスを去るKUSHIDAと元IWGP王者が
後楽園ホールのメインイベントで見せたというのはね、本当に物凄い意味があると思います。
正直に言えば、この時代に棚橋弘至がIWGP王者でいいのだろうか?という声もあるでしょう。
それは棚橋弘至が嫌いとかそういうことではなくて、次世代のことを考えるとです。
ただ、この試合を見た時に棚橋弘至が丸腰であればまた意味が違ってきますから
本当に心のそこから棚橋弘至が今のIWGP王者で良かったと思いました。
試合はここから徐々に激しい打撃、お互いの得意技などを出し合った中で
最後の技が棚橋弘至のハイフライフローではなくテキサスクローバーホールドだったことも
この試合が一生ファンに残る結末だったと思います。
そして試合後、KUSHIDAは「さよなら」でも「ありがとう」でもなく
「行ってきます!」と言葉を締めくくりました。
中邑がWWEに行った時も、最後は「さよならは言いません」と言っていたことを
思い出してしまいましたが「行ってきます」に対して後に言う言葉は「おかえり」です。
もちろんKUSHIDAがまた新日本プロレスのリングに上がる日があるのであれば
とても楽しみなことではあります。
しかし「海外通用しなくなったから出戻りました」ならね、戻らないでほしいです。
それは中邑もKUSHIDAもそうですし、今年離脱した選手もそうなのですが
新日本プロレスという世界最高峰のリングに上がるのであれば、常に全盛期の状態で
常にピークの状態のレスラーでないとファンとしては納得できませんからね。
次にKUSHIDAを新日本のリングで見るときには、世界最高のジュニア選手として
新日本プロレスの敵として侵略するぐらいの勢いであることを願います。
と、感傷的に終わることができないのが「激動が起こっている新日本プロレス」
試合後に感動的なムードをぶち壊しに来た男はやはり彼でした。
ジェイホワイトの強襲「こっちが本筋だ」
試合後に乱入してきたジェイホワイト。
イスで人を殴ることは一般人の人生だと普通は1度もありませんが
ジェイホワイトは両足が浮いた状態でフルスイングできる男です(笑)
当然会場は大ブーイングですが、彼はそんなことを気にするたまではありません。
26歳にして圧倒的なブーイングという支持を得ていること男にとっては
それはエネルギーでしかないのです。
そして、棚橋がケニーに腕を破壊された時や内藤が高橋裕二郎に膝を破壊された時を
思い出してしまうような、残酷なパイプ椅子のサンドイッチで棚橋の膝を潰しました。
「なんてことをするんだ!」と多くのファンが思ったはずですし
私も「今日はやめてくれよジェイ」と思ったのですが、試合後のジェイのコメントが
あまりに正論すぎて我に返りました。
ジェイ「今夜はとても感動的な夜だったな。KUSHIDAにとってニュージャパンのラストマッチ。まあ、みんなそっちに集中してたんだろうけども、注意する方向が違うんだよ。新日本サイドとしてはそっちのほうが大きなことだったんだろうけど、本筋はコッチだろ? スイッチ・ブレイドのほうだよ。俺はどこからでも出て来るぞ?
「本筋はコッチだろ?」
この一言で誰も反論できなくさせる26歳、何とも素晴らしいです。
ちょっと本気で「何するんだジェイ!」と思った自分が恥ずかしくなりました(笑)
この辺りのジェイの感覚って内藤に近いのでしょうね。
内藤も「KUSHIDA二度と帰ってくるな!」と、まぁエールを込めて憎まれ口を叩いてましたが
そもそも内藤は中邑がWWEに行くときも「なぜ引き抜かれた選手の壮行試合までしてあげて拍手で送るんだ?」と
会社とファンに疑問を呈していましたが、ジェイからしても同じ気持ちだったのでしょう。
確かにそれは本当に正論で、数日後にジェイとのタイトルマッチがありますと。
その棚橋がその直前にKUSHIDAの最後の相手としてシングルマッチをしますよと。
そのせいでジェイは棚橋弘至との前哨戦が1つ減りましたと。
そして会社もファンもKUSHIDAのラストマッチで感傷に浸りたいところでしたけど
IWGPという新日本プロレスの頂点であるベルトのストーリー、彼の言う本筋と
去る人間のどちらが重要なんだよ?って言われてしまうと、ぐうの音も出ないです。
新日本プロレスに所属する人間の思いとか、IWGPへの思いや大切さを
一瞬ファンが忘れていたところに一撃で目を覚まさせることができるジェイホワイト。
棚橋弘至との一戦で時代を変えることができるのか。
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