無差別級としての岩本煌史がスタート|試合途中でジュニアから無差別級へ変貌した?

全日本プロレスのジュニアのトップとしてずっと守るものを背負っての戦いを続けきた岩本煌史。
今年の上半期はCIMAからジュニアのベルトを取り戻し、さあここからストロングハーツとの戦いへ?とファンが思っていた中、大田区総合体育館大会でフランシスコ・アキラにまさかの敗戦。

ジュニアのベルトを取り戻したいという思いよりも「CIMAに雪辱する」ということが優先で、その達成の結果ついてきたのが世界ジュニアだったというテンションの部分もあったからの不覚だったとは思いますが何にしても岩本煌史は短期間でベルトを失いました。

ここで、再度取り返せば世界ジュニアの最多戴冠という記録で歴史に名前が残ることにリーチがかかっていた岩本の取った行動は・・・「ヘビーとやらせろ」という会社への要望。

ただし「階級分けとかどうでもいい」というスタンスで、ヘビー転向ではなく「無差別級としてヘビーの中で戦う」という独自の考え方でした。

プロレスというジャンルの面白いところは「ヘビー・ジュニア」という部分の階級分けへのこだわりが強く、あくまでもヘビー>ジュニアという力関係から抜け出さないこと。
それなのに「自分が名乗れば体重が100キロ未満でもヘビー」という曖昧さもあり、階級の名称への価値分けはしているのにそこに所属する部分は曖昧であるという大きな矛盾がプロレスのある意味では魅力であり、ある意味では一般のスポーツファンに疑問を感じられる部分です。

そんな中で階級はどうでいいと。

無差別級で行くというスタンスは、これも一見すると曖昧に思えてしまうが、実は冷静に考えるとプロレスの階級制度という特殊な部分をモノサシにすると無差別級というカタチこそ納得が行くんですね。

この面白い道を選んだのが岩本のこれからの道であり「岩本道」とも言えるカタチなのではないでしょうか。

また、現代のプロレスでは「ユニットを組んでユニット抗争が基本」であり「わかりやすい」という見せ方ばかりになっていますが、岩本煌史は現在ユニット無しの個の状態。

もちろんこれからの未来のどこかではユニットを組む日がくると思いますが、現時点ではジュニアのトップ選手だった岩本が個で無差別という究極の無差別状態になっているというのも興味深いです。

逆に言えばユニットを組んだままだったら無差別級という好き勝手な動きはできなかったかもしれませんから、今がベストタイミングだったのではないでしょうか。

岩本煌史、ジュニアから無差別への変化が起きたのは試合途中だった?

無差別級になりゼウス戦を迎えた今回。
おそらく「コスチューム変化とかそういうことはしなさそうだ」と思って見ていたのですが、見た目の変化はフェイスマスクをつけていないという部分だけでした。

ただ、意外なことにガウンにフードを被りそこにフェイスマスクをつけての入場ばかりこれまで見てきたので、意外なことにマスク無しでフードを被っていると随分印象が違うように見えました。

試合が始まりまず思ったことはそこまでゼウスとの体格差を感じなかったこと。

ただ、それでもゼウスはずっとヘビー級で戦ってきているヘビーのトップ選手ですし、岩本はジュニアで戦ってきたのですから「慣れ」が違うというのは当然の部分。

慣れというのは人間の重要な部分で、様々な部分で作用するファクターの1つです。
例えば私のようなへなちょこな体の中年男性でも、2年前までジム通いをしてパーソナルトレーニングを受けて1年ぐらいでベンチ100キロ上がるようになったときも「ああ、これは慣れだな」と思いました。
なにせ体はしょぼいのです、100キロ上がる体ではないのは明確でした、でも上がる、それはなぜか?肉体と神経が慣れただけだと思うのです。
だって私より遥かに若くごつい人でも初心者はヒーヒー言いながら60キロを上げていたのも目の当たりにしましたからね。

さて、そんな慣れの部分でヘビーに慣れていかないといけないのが岩本なのですが・・・試合序盤、ゼウスのヘッドロックとタックル一発で場外へエスケープした岩本。

「ここからどう戦うのか?」

そう思っているとフェイントをかけてリングインし、ゼウスに対して低空ドロップキック→エプロン越しのドラゴンスクリュー→膝攻めと、大きい相手と戦うときのセオリーである足攻めを開始。

ここでもしかすると私以外のファンの方も10%ぐらいの人は思ったのではないかと思うのが「これだとジュニアがヘビーと戦うときの感じじゃないか?」と。

いや、もちろん同階級同士でも足攻めは効果的ですし戦略的にはわかるのですが「無差別級で行く!」と宣言した岩本煌史がヘビーとの戦いを始めた最初の試合でここからずっと足攻めで組み立てるとジュニア感が強くないか?と。
負けてもいいから真っ向勝負をし続けることで無差別級岩本煌史のファーストフェーズが完成されるのではないか?と。

しかしそんな不安は無用でした。

この直後から、岩本はゼウスに真っ向から挑み、そして真っ向から受ける戦いを見せてくれました。

ジャーマンもブレーンバスターでもぶん投げましたが、そもそも暴走大巨人と戦ったときに石川修司も諏訪魔も投げ飛ばしているのですからパワーで負けることなんてありません。

ただ、これまでと受ける技の重さがジュニアとヘビーでの違いがあるだけの話。

これを受け続けて「慣れたときの岩本煌史」こそ「無差別級として全日本プロレスのトップに立つ」ことができるはずです。

そして実際にゼウスの強烈なラリアット、チョークスラム、ジャックハマーと真っ向から受けて敗北した岩本でしたが、これを受けたことで...RPGゲームでレベルが上がる時に流れる有名なアノ音楽が流れ続けていたのではないかと思います。

ここ数年の岩本煌史は「岩本が負けることがサプライズ」「勝って当たり前」という空気の中にいました。
辛うじてタイトル戦などで「岩本も今回は簡単じゃないぞ」とファンが思うぐらいのことが年に数回ある程度でした。

しかし今日からは「岩本が負けるだろうな」という空気の中で「勝てば衝撃が走る」というようなカードが増えていくはずです。

そしてそれがいつの日か再度「岩本が負けるだろうな」「勝てばサプライズ」的な部分がファンの気持から消滅していったときに、全日本プロレスのトップに立っているということになりますし、それは遠い未来の話ではないでしょう。

これがこれからの面白いところですし、まだ年齢的にも若い選手なのでここから再度踏み上がって駆け上がっていくという時間はたっぷりあります。

ゼウスが試合後に「90キロ後半で1発の重さもあった」「全日本プロレスの頂点、三冠のベルトを目指せる選手だと思う」と発言しましたし、岩本も試合後に「これからの俺は攻める」という言葉が出ましたが、面白いもので「守る者」が「王者」であり「攻める者」が「挑戦者」であるのがプロレス、いや人生というものの本質。

挑戦者の立場でもそう見えぬ強さと格があった岩本煌史の挑戦者としての姿をこれから見ていけるのは全日本プロレスの中でも大きな楽しみの1つになることは間違いありません。

15日には諏訪魔とのシングル戦が組まれていますが、負けずして三冠返上をしたばかりの立場であるトップ中のトップとのシングル戦を経てまた岩本は強くなるはずです。

王道トーナメントの1回戦は同世代の土肥こうじが待っていますし、そこを突破できれば高確率で因縁があり三冠王者でもあるジェイク・リーとの対戦ということもありえます。

孤高の無差別級・岩本煌史の今後には注目が必要ですね。

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が、1つだけ大きな不安が。

このまま一人ぼっちが年末まで続くと、ヘビーと戦える場として貴重な最強タッグに出るためのパートナーがいません(汗)

うーん・・・野村直矢選手が復帰して組んでほしかったりするんですけどね。欠場中に陣JINがなくなっていますし。

そうだ、野村直矢と言えばさ、大田区総合体育館のときの「あの男が帰ってくる!」と映像で煽って、ファンの多くが「野村だ!」と歓喜の涙を流した直後に「立花誠吾!」ってさ、あれはダメよ全日さん。
そりゃ立花選手の復帰はめでたいことですけど、今の全日本プロレスで「あの男が帰ってくる」と言われたら野村しかないでしょ。

あれは無い。

めっちゃ豪華なサプライズ感のある箱に入った義理チョコをもらったようなものですよマジで。


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