藤波辰爾+エースの戦い方=新しい棚橋弘至。
そんなイメージでこの1年ほどの棚橋を見てきただけに、よりによって『グラウンドコブラで負ける』というのは無念の極みでした。
藤波も超短期で橋本真也にベルトを受け渡したときがありましたが、逆にIWGPをダッシュした時はグラウントコブラでの丸め込みだっただけに、今回の棚橋弘至はドラゴンの悪いところ取りのような状態です。
もちろんザックセイバージュニアの場合はすでにトップ扱いの選手ですし、今現在で言えば棚橋より格上なのかもしれません。
ということは時間の流れを常識的に考えれば、これから先はずっとその関係性になってしまうわけです。
このこれからの悲しさを抱えつつ、それと同時に「沈んだ太陽が少しだけ昇って終わった」という絶望感すら感じてしまいます。
IWGPも1カ月。ブリティッシュヘビー、約2週間。ハア……俺は、どういう闘いをして、どういうレスラーになって、どうしてチャンピオンになっていくかっていうのが、わかんない。わかんなくなってきた。(※うつ伏せになって、ゆっくりを起き上がって)最初から、いや、ポンコツからだっていい、出直してきます。
何が悲しいって、かなり高い確率で『この棚橋弘至の現実への悲しさが終わる日は、棚橋弘至がトップに戻るという期待がなくなった日』であるということ。
解決や解消があるのではなく、その問題を忘れた日であるということです。
棚橋弘至は今回の敗戦後に『最初から、いや、ポンコツからだっていい、出直してきます』と話していますが、棚橋という存在はもうすでにキャリアも実績も格的にも「出直す」とかそういう存在ではないのです。
ポンコツからのリベンジとか、そんな立ち場ではないのです。
「進化が止まんねー」と叫びながら新日本プロレスを浮上させた棚橋ですが、激戦と時間の流れから明らかなる退化を受け入れなくてはいけない部分が出てきました。
進化が止まって退化が見えた時に「変化」があれば延命できたはずですが、棚橋弘至という新日本プロレスの看板が形を変えることはこれまでできませんでした。
そして今、棚橋の変化がおそらく許される環境に新日本プロレスはなりましたが、少々の変化程度では話にならないほどのレベルの高さになってしまったという状況なのではないでしょうか。
2018年のG1優勝者であり今年の1月4日にIWGPを手に入れていたエースが2019年9月の時点でここまで絶望感がある状態になっているのは驚きですが、、、いや、逆にその輝かしい実績との落差こそが問題なのでしょう。
棚橋弘至を苦しめているのは輝かしい実績や映画主演などリング内外で手に入れた地位と名声なのかもしれません。
また、考えてみれば「一緒に徐々に年齢を重ねながら戦い合えるライバル」であるはずの中邑真輔と柴田勝頼がいないということも棚橋弘至にとっては大きな影響が出てきているのかもしれません。
ただ、棚橋弘至の挑戦というものはまだまだこれから続いていくと思います。
逃げるように去っていった長州・藤波。
強いまま去っていった橋本・武藤。
雑にフェードアウトさせられていった第3世代。
新日本プロレスの歴史の中でトップの選手がしっかりトップを張り、そしてしっかり老いていく先というモデルを見せてくれたことはほぼありません。(ジュニアはライガー選手がお手本になるはず)
なので、棚橋選手には「ここまで新日本プロレスを立て直して世界で注目される団体までにした中心選手がどのようにキャリアを終えていくのか」というところまで見せてもらわないといけないのです。
それぐらいに棚橋弘至は偉大なレスラーであり、これからのレスラーたちに多大な影響をもっと与えていく必要があると思いますから・・・
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