棚橋弘至はKENTAを「迷子」という言葉で表現しました。
NOAHからWWEへ行き、全く自分が出せないまま帰国したKENTAはNOAHではなく新日本プロレスへ参戦したわけですから迷子という表現は素晴らしく的確だと思いました。
そんな迷子のKENTAと棚橋弘至の試合は、お互いロープブレイクで顔を張り合うことから始まり、棚橋のアピール中に後頭部を蹴り飛ばすというような「団体対抗戦での緊張感」があるような、これはG1の公式戦の1つなのではなく「生まれと育ちが違う二人のプライドのぶつけ合い」なのだと感じました。
カウントを1で返す棚橋、それに対して膝のサポーターを外して蹴ると見せかけて後ろ足で頭を蹴る挑発をするKENTA。
全て受け止めてやると言わんばかりに蹴りを耐え続ける棚橋に対して遠慮なく打ち込むKENTA。
いつもはアピールをしてから行うサンセットフリップですが、無駄なアピールをせずに打ち込んだ棚橋。
そんな二人をリングサイドで見ているのは棚橋弘至のライバルでありKENTAを新日本プロレスで連れてきた柴田勝頼。
石井とEVILやSHOと鷹木とはまた違った意地の張り合いが繰り広げられる中で、ダラス大会のときにはまだ迷いが見えたKENTAが本当のKENTAに戻っていく・・・
迷子のKENTAが帰る場所を見つけた。
『迷子の迷子のヒデオ君、あなたのお家はどこですか?』
まるでポリス棚橋が問いかけるかのような厳しい膝への攻撃や、棚橋が背負ってきた新日本プロレスを見せるかのような気迫を見せる。
スリングブレイドもここ数年では一番勢いのある決まり方をしました。
ただ、強烈な衝撃を受けたことで迷子だったKENTAの魂がKENTAの肉体に戻ってきたのではないか。
そして棚橋の強烈な張り手2発を浴びて完全に居場所を見つけたKENTAはカウンターの張り手で棚橋を膝から崩すと、強烈なラリアットを食らわせる。
その後は棚橋がツイスト・アンド・シャウト、スリングブレイド、ハイフライフローで畳み掛けましたが、最後は顔面への膝蹴りから柴田の目の前でのPK、そして喉元へ突き刺さるgo2sleepで棚橋を沈めました。
劇的な勝利に饒舌になるKENTAは試合後の締めのマイクで笑いを取るなどしつつも最後には「初出場・初優勝をしてまたここに帰って来ようと思います」と宣言しました。
人間も動物も帰る場所は家です。
家がわかっているなら迷子ではありません。
棚橋弘至という新日本プロレスの象徴との戦いを経て、KENTAは迷子ではなくなりました。
彼の名札は@「KENTA」「ヒデオ」「イタミ」「NOAH」「WWE」などと色々書いてあるから迷子だったのでしょう。
しかし、今はもう「KENTA」としか書いてないはずです。
棚橋弘至が迷子になってしまった・・・
一方で試合後に棚橋弘至は「迷子は俺だった」と語りました。
この真意は・・・わかりません。
ただ、正直ココ最近と比べれば動けていましたし「新日本プロレスの棚橋弘至を見せた」と思います。
でも考えてみると欠場と復帰を繰り返すようになり、ハイフライフローを封印して新しい棚橋をと言いながら何も見つからずにハイフライフローを復活させると、新技を披露すると予告したのにその新技があまりにも酷く世界中のプロレスファンが「今の何?」とツイートし、その後には使われず。
そして前年度の優勝者が開幕2連敗ですから迷子とも言えなくありません。
棚橋弘至の場合は名札には「エース棚橋」としっかり書いてあるはずですし、クラスで一番の人気者なので迷子にはならないはずなのですが・・・
でも棚橋の家は新日本プロレスのトップでありIWGPだと考えると、何度も通ったその通学路が工事中となってしまって、別のルートがわからなくなっているのかもしれませんね。
人は地図や方位磁石を持っていなくても太陽が昇る方向さえわかれば何となく道はわかりますが、太陽そのものは何を見れば行き先がわかるのでしょう・・・
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