武藤敬司の語る引き算のプロレス

小学生の私を新日本プロレスファンに引きずり込んでくれた選手、武藤敬司。
その武藤選手が著書「さよならムーンサルトプレス」のイベントで話した内容がスポーツ報知に掲載されていましたが、これは確かにそうだなぁと思う一文がありました。

「今のプロレスラー、プロレス界って今の若手とか、デタラメに足し算のプロレスしているけどさ、技を足して足して足してってね。オレは引き算しかねぇけどさ。それでも見せれるプロレスをしていくしかねぇからさ。」

確かに今のプロレスというのは足し算していくプロレスが多いですし、次元を超えた掛け算でのプロレスも増えています。
ただそれが悪いことだとは思わないんですよ、世の中どんなことでも進化していくものですからね。

ただシンプルなのに素晴らしいと言われることはやはりそれもまた1つの進化だと思いますけどね。

決め技を増やすのか繋ぎ技を増やすのか、武藤敬司が引き算のプロレスを完成することができた理由

さて、武藤敬司という選手はムーンサルトプレスが代名詞でしたが日本中が熱狂したUWFとの対抗戦でドラゴンスクリューから四の字固めという必殺コースを確立しました。
そしてプロレス界にブームを起こしたシャイニングウィザードなど試合で使う技は少ないものの、決め技にも繋ぎ技にもなる技を沢山持っていました。

例えばフランケンシュタイナーで勝つこともあれば、そこに腕十字を足すこともありましたし、ドラゴンスープレックスで勝つという試合もありました。

だからこそ引き算をしても武藤敬司のプロレスが成立するというか、1つ2つ技が減っても問題ない上に「もしかしたらあの技を使うかも・・・」なんて妄想が勝手にファンの中で膨らみます。

一方で、今のプロレスラーが今後引き算のプロレスをしていくことは難しいとも思います。
「元の技が多いから引き算はいくらでもできる」という考え方もできますが、そもそも今のプロレスというのは大半の試合で必殺技でしか試合が決まらず、それが多くの場合1つです。

また、今のプロレスでは必殺技が新しくなると旧必殺技は奥の手となるのでそれでは試合が決まらない傾向にあります。
後藤洋央紀が昇天改からGTRに必殺技を変更した後、ココぞという試合で昇天改を使いますがこれで決まらないわけです。
棚橋弘至も昔はドラゴンスープレックスで決める試合が多かったですが、ハイフライフローが誕生してからはドラゴンスープレックスは繋ぎ技の1つになりました(だからこそ中邑にドラゴンスープレックスで勝利した試合は感動的になったのですが)

必殺技1種だけでしか決まらないプロレスになってしまうと、凄い技なのに「これは返すだろうな」なんて見方をされてしまいますし、じゃあその必殺技を引き算した時に何が残るのか?という状態になってしまいます。

ニュージャパンカップの棚橋弘至はハイフライフローを封印していましたが、本来なら武藤敬司の系譜の先にいる棚橋弘至には最高の引き算と新しい棚橋弘至の構築をもっと前にしておいてほしかったという声も多いと思うのです。

ゲームで言えば四天王や三銃士のプロレスはマルチエンディングがありました。
ただ今のプロレスの多くの場合ではゲームの内容もグラフィックも処理能力も上がっているけどエンディングは1つという感じなんですよね。

マルチエンディングが1つエンディングを減らしても成立しますが、1つのエンディングを削ったらそれは未完成品になってしまいますからねぇ。

この技で決まるのか!!という驚きが減っていることは事実です。
なので試合中に必殺技以外の技でフォールしてカウント2で返されたときに唖然とした表情を浮かべても「いや、その技で決まったことないっす」になってしまうということにも繋がっているんですよね。

橋本真也がジャンピングDDTを返された時とかならわかるのです。
フィッシャーマンDDT、垂直落下式DDTが誕生した後もDDTで決める試合がありましたからね。

特に地方大会では逆に必殺技を封印して別の技で決める試合がもっとあると面白いなぁとは以前から思っていました。
今は地方大会もネット中継する時代ですのですぐにそれが全世界に届きますから、更に1段階プロレスの終盤の興奮度が上がると思うですよ。

ただ、それでも今の新日本プロレスでの必殺技大喜利的な終盤は最高に面白いですからね。

この先に今のプロレスがそのまま更に進化していくのか、それとも別の道ができるのか?
そういうことを考えると20年先まで楽しみになってきませんか。


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