冬の札幌、ロスインゴVS鈴木軍 ジュニアタッグが超名勝負!しかし内藤とタイチは賛否両論

何かが起こる冬の札幌。二連戦の二日目となった試合でしたが初日と同じく見どころ満載の大会となりました。
大きな注目を集めていたのは後半3試合、ロスインゴと鈴木軍の3大タイトルマッチでしたが、個人的なベルトバウトはジュニアタッグでした。
また、メインの内藤とタイチはネット上でも賛否両論、双方のファンから批判が増えて新日本プロレス公式が若干炎上してしまう事態になりました。

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BUSHI・鷹木・デスペラード・金丸は素晴らしい名勝負に

3WAY鬱憤が貯まるIWGPjrタッグ戦が続いていた中で、正当な形でのタッグタイトル戦となったこの試合。
試合開始からお互いがフルスロットルで、いつもの試合よりスピードが1.5倍はあるのではないか?と思うぐらいにスピーディーな試合となった上で鷹木・BUSHI・デスペラード・金丸と全員が突き抜けるような個性を見せつけての激戦・名勝負となりました。

鷹木は足を負傷しながらもパワーとスピードは衰えずにヘビー級でも通用するであろう圧倒的な強さを見せつけましたが、ロスインゴ側としては脇役・サポート役回ることの多いBUSHIがキャリアベストなのでは?というぐらいの気合いの入り方で、正直「いつもこれならシングル王者も狙えるぞ!」というような覚醒に近いものを見せてくれました。

また、なんというかBUSHIが熱くなる相手ってKUSHIDAだけだったような印象なのですがこのタイトル戦とそれまでの抗争でデスペラードという好敵手をハッキリと認識したような印象があります。
またデスペラードも高橋ヒロムが欠場する中で好敵手が1人いなくなっているわけですが、BUSHIもデスペラードも飄々としている中に熱さがある選手なので、その熱さのぶつけどころをお互いに見つけたというような感じなのでしょうか。
この二人の魂のこもった張り合いは「新日本プロレス」そのものだったように感じます。


そして金丸も凄い、凄いというか美しさすら感じました。
年齡はもう42歳ですか、普通なら衰えそうなものですが寧ろ進化しているぐらいに凄い選手です。
動きの速さは光のごとくですし、テクニックも思わず声が上がるようなことを簡単にやっているように見えてしまうぐらい鮮やかに見せます。
受け方も美しいですし、そしてこのジュニアタッグのスピード感の中でも細かい動きから反則まで差し込んでいくわけですから頭の中を割って見てみたいぐらいです。

試合終盤の旋回式DDTからムーンサルトプレス、ディープインパクト狙いを返されてジャーマンの流れはまさに金丸の芸術を見ているかのようでした。


この日はロスインゴと鈴木軍の3大タイトルマッチでしたが、当然相手は目の前の人間だけではなくて他の試合ということも考えるものだと思いますが、僕個人的な感想ではロスインゴと鈴木軍の試合、またこの札幌2連戦の中でのベストバウトはこのIWGPjrタッグ戦でしたし、ベルトの価値がグッと上昇したと思います。

またこの試合はSHOとYOHにも相当の焦りと刺激を与えたと思いますし、高橋ヒロムだってこの試合を見たら復帰への思いが強くなるのではないでしょうか。ジュニアヘビー級全体に影響を与えるような価値のある試合だったと思いますし、アポロ55とゴールデン☆ラヴァーズの名勝負を超えるような名勝負数え唄をこの2チームは今後も見せてくれるのではないでしょうか。

EVIL SANADAの耐えるタッグがIWGPタッグを防衛

過去にも何度も比較しているのですが、僕がプロレスを見始めるきっかけとなった武藤・馳のタッグとEVIL・SANADAのタッグは似ているところがあります。
武藤と馳はベイダーやビガロ、スタイナーブラザーズの圧倒的なパワーの前に耐えて耐えて逆転を狙うという試合が多かったですが、その耐えている時の美しさに僕ははまってプロレスファンになりました。

EVILとSANADAもランス・スミスと同じような試合をしていましたが、今回の鈴木・ザックという関節の鬼に腕も足も首も痛めつけられながら必死に堪えて一瞬の瞬発力やコンビネーションで切り抜けていくという姿と、一発の自分の必殺技を大切にするというスタイルは90年代のプロレスをEVILとSANADAのフィルターを通して2019年に見せているように思います。
またそれがお客様の心を掴んでいるわけですし、名勝負を生むのですからやはりこの二人のタッグというのは進化し続けているなと思います。そしてシングルプレイヤーとしても素晴らしい2人がIWGPタッグへの思いが強いことが伝わってくるところも熱くさせてくれる要因ですよね。


守りに入っている時に絵になるレスラーこそファンの心掴むレスラーであると個人的には思います。
もちろんその姿からプロレスファンになったので、攻めている姿がカッコいい選手に惹かれるファンの人も多いと思いますが、僕の場合は自分のプロレスファンのルーツを繋いでくれているのはEVIL・SANADA組です。

またSANADAは当然武藤敬司の遺伝子がありますので、本人も強く意識していることでしょうし、その辺りも90年代からのファンには刺さるところがあるのではないでしょうか。

また、フィニッシュはスカルエンドではなくムーンサルトプレスだったというもいいですね。
個人的にはスカルエンドよりムーンサルトプレス締めの方が好きですし、鈴木みのるも一瞬彼が武藤敬司に見えたかもしれません。


先程のジュニアタッグもそうですが、こちらもまたシングルのベルトを巻いていてもおかしくない選手です。
なのでタッグベルトが足枷になる可能性もあるのですが、内藤がIWGPとICを同時に巻くという宣言をしているのですから、SANADAもEVILも二冠王を目指していいのではないでしょうか?
棚橋弘至、内藤哲也が年齢的に衰えるのを待ってから狙うよりも、彼らが壁になる時にベルトを狙ってほしいです。
5年後には自然とオカダ・EVIL・SANADA・ジェイホワイトの4強になると思いますが、自然を待つよりも力で奪うのが新日本プロレスらしいですからね。

内藤とタイチの試合はこれでよかったのか?賛否両論が巻き起こる事件に。

問題とメインイベント、内藤とタイチのインターコンチネンタル戦ですが・・・冒頭で書いたように賛否両論。いやロスインゴファンも鈴木軍ファンも「なんですかこれ?」と言う声が多く、冷めてしまった人も多く見受けられます。

僕の感想としても・・・ここまでブログで書いてきたようにワクワクが止まらない状態でしたし、内藤とタイチの相性の良さに事前の盛り上げ方もですがハードルがかなり上がっていただけにね、正直「なぜ?」という疑問しかない状態になりました。

普段は新日本プロレスファンの人の声とかは見ないのですが(プロレスファンの仲間からの感想は聞きますけど)今回ばかりは「もしこれで大絶賛ならどうしよう」と思って恐る恐る新日本プロレス公式Twitterを見たところ、7割ぐらいのファンが「なんですかこれ?」状態でしたので「そりゃそうだよなぁ」と安心しました。

まぁ中には「タイチ氏ね!」「これは暴行事件だ!逮捕されろ!」とか、まさにタイチの言う一部のマナーの悪いハポンファンも出てきましたが(これを炙り出すための試合だったのか?)まぁ昔も書きましたけど全体的に見ると3割ぐらいの人はプロレスという格闘エンターテインメントの仕組みがわかってない人がいる時代なので仕方ないのかもしれません。
プロレスファンなら試合に対して「内容が悪かった」という批評はしますけど、負けた方に「弱いw」とか勝ち負けの部分は語らないですからねぇ・・・(苦笑)

あと、凄く多く目にしたのが「本当のプロレスファンなら批判はしない」という声。
これも前に書きましたけど、最近プロレスファンというかユニットファンになった人って僕が若い頃のXJAPANファン(僕自身そう)とかV系バンドファンのように全肯定することを愛としている層と共通点が非常に多いです。
それと同時に「国民総出で飽きっぽい時代」なので、2年ぐらいプロレスを見ているファンの人が「自分は長年のファンで本当のプロレスファン、自分は古参で周りの気に入らない人はニワカ」なんて考えになっている傾向もあるんですよね。

そして決まり文句は「嫌なら見るな」となるのですが、例えば人間関係にしても恋愛にしても相手のことを100%肯定しないと成立しないですか?ってことですよね。
大親友でも嫌いなところはあるでしょう、別にそれは好きの中の小さな嫌いな部分だったりしますし、それを言えるのが本当の愛情だと僕は思うんですよ。

同じスポーツで言えば、サッカー日本代表なんて負けても勝っても「きゃーーー」のニワカサポーターだらけでしたが、今ではファンがあーでもないこーでもないと言いますし、それがジャンルの成長にも繋がっているわけで、もちろん負けたから暴言を書くとかは裁定の人間がやることですが、今のように誰でも情報も感情も発信できる時代に全肯定こそ愛だと考えているならそれはプロレスが他のスポーツから10年遅れているということになると思いますからね。

また「これは嫌」「これが良い」「これも良い」など日本語は難しくて大変ですが、この手の時に上記したような属性の人は「これも良い」じゃなくて「これが良い」という極端な意見を出しがちです。
心理的に全否定を目にすると全肯定をしたくなるからそうなるのでしょうけど、毎回こんな試合が良いならそもそもロスインゴファンにも鈴木軍ファンにもプロレスファンにもなってないのではないでしょうか(汗)

僕としては・・・これも良い、に近いですけどね。
プロレスという非現実、非日常を味わえる世界なので何が起きても基本的にはそれがプロレスだと思っています。
そうじゃないなら30年近くプロレス見てません(笑)
ただ、不満があるとするなら「これは誰が得をした試合なの?」ということですね。

入場中の内藤を飯塚が強襲し、ここから妙な間延びが始まる

引退が決まっている飯塚は天山からの連日の友情タッグ復活の呼びかけをされているわけですが、地元となる北海道札幌大会でも暴れ放題に暴れて帰っていきました。
と思ったら内藤の入場中に背後から登場し、久々に花道をちゃんと歩いて(笑)脚立で内藤を強襲。

藤原喜明が長州力にテロ行為をしたあの札幌のオマージュというのは昭和からのファンの人に伝わりますが、これがまた微妙でした。


映像で見て「え?」と思った人は多いでしょう。
ちょこんと脚立が頭に当たっただけで内藤がピクリとも動かなくなり・・・それはまぁいいとして、そこからヤングライオンが救出に入りますがグダグダな感じで、この手の時は会場からのどよめきが生まれるものですが映像で見る限り何だか静か。
これが数分続いてしまい微妙な空気に。


その空気を吹き飛ばしたのは、花道でタイチが内藤にお見舞いしたブラックメフィスト。
これで一気に空気は逆転として、内藤はもう試合ができないのでは?という状況に。
この辺りの遠慮しないタイチとそれを受ける内藤の関係性はやはりカッコいいと思いましたが・・・


完全に意識を失った内藤は三澤トレーナーが引き連れて控室に戻すことに。
この三澤トレーナーが出てきた時は本当に危ない時であるという、悪く言えば新日本プロレスファンにも浸透してしまった情報を演出として利用したというところでの批判は大きいような気がします。
また、この後にドクターチェックに入るというアナウンスが入りますが、お客様からはどよめきではなく「拍手」ですから誰しもがこういう演出なのね、内藤いつ戻るんだろう?と楽しみにしている拍手を送った時点で成立していない印象。

ここから内藤が戻るまでの長時間、さすがタイチという部分ではマイクで悪態をついたり実況席の真壁や蝶野にも絡んで会場の注目を自分に集めたことでしょうか。


そして三澤トレーナーが戻り×印をだし、菅林会長や海野レフェリーと協議を開始。

内藤復活、ここからタイトルマッチが正式にスタート

ここで無効試合になって暴動が起きるぐらいのことがあっても事件としては面白いですし(批判はとんでもないことになると思いますが)内藤が戻ってきて数分で負けてしまうということもタイチが起こした事件として語り継がれるなぁと思って画面を見ていると、BUSHIに手を借りながらボロボロ状態の内藤がリングに向かってきました。


僕としてはボロボロの内藤って魅力的だと思いますし(先程書いたEVIL・SANADAも)内藤の美しさはやられっぷりに集約されていると思いますので「ここからどこまでボコボコにされるんだ!?」と期待しました。

リングに上がりゴングを要請する内藤、そして試合が始まってしまいましたが左腕がダラッと下がり力が入らない中で弱々しいエルボーをタイチに打ち込んでいきますが、打ち込んだ内藤が辛そうな状態。

これはあっさり試合が終わりリマッチとなるのか?と思っていると、レフェリーストップを振り切って試合をし、実況席も「内藤は試合ができる状態じゃない」と連呼している中で内藤が普通に動けるようになり、タイチの大技を受けても立ち上がり20分も試合をした上にデスティーノで勝利して防衛。


ドラゴンボールの悟空のように死の淵から蘇り悪を倒す内藤。
う~ん・・・これでタイチは試合ができる状態じゃない内藤すら倒せない高角度バックドロップや天翔十字鳳の威力ということになりますし、じゃあ前日にバックドロップで負けたBUSHIって何なの?となります(苦笑)

また、内藤はドクターが止めるほどの状況の中でもタイチレベルの選手に勝ててしまうということで、これをモノサシにするとオカダや棚橋の10倍強いキャラになってしまい・・・これでもう普通のシングルマッチなら苦戦すら許されなくなってしまいます。

試合後の回復力も尋常じゃなく、デハポンの大合唱で大会の締めも完璧です。


ところで、内藤の目指すところは鉄人強キャラではないでしょう。タフネスな選手ではありますが、こういう強さを求めている選手ではないことはファンにはわかってしまうはずです。
タイチに関してはここまでしても普通に負けるということで一気の格下げ。しかも最終的に内藤が勝ったなら起こしたことは事件でもなんでもない。
ロスインゴファンも鈴木軍ファンからも「これWWEですか?」という声が多発。
そして鈴木軍がロスインゴに全敗とどこかで見た記憶がある結果。

そして試合後には内藤からタイチへ再度「もう1歩踏み出す勇気」を呼びかけています。
これは事前のインタビューでもそうですが鈴木みのるをヤレと、裏切れという意味合いかと思いますが・・・それはインターコンチネンタルをタイチが取ってこそボス追放という大義名分ができるわけですよね。
鈴木軍が全敗しましたと、そして自分はドクターストップがかかっている選手に負けましたと。
それで鈴木軍の中で内輪揉めが起こったとしても「負けた奴らが仲間割れしてる」という光景が広がるだけです。

これ、勘違いしてはいけないのは内藤とタイチの試合は凄く面白かったということ。
やはりこの二人は合いますし、今後も期待できるライバル争いをしてほしいということ。
そしてタイチ劇場、この状況でマイクと態度で完全に自分に注目を集めたことなどは天才的ですし、ファンのヘイトを集めたことなども良かったですし面白かったです。

ただ問題なのは、この二人がせっかく盛り上げてきたのに結末となるストーリーがあまりに雑だったことであったり、「試合ができる状態じゃない」と判断した三澤トレーナーなのに内藤が普通に試合をデキて勝利した時点で三澤トレーナーの信頼度が下がるという凄く可哀想な立場になったこと。
何だか頬が上がってニヤニヤしているように見える表情で飯塚を止めるヤングライオン達であったり、痛めた腕でマイクを握ってしまう内藤らしくない行動とそもそも腕をあれだけ痛めた体なのにタイチがそこを攻めないなど、本当は乗り切れてなかったのかな?と思われても仕方ないことでしょう。何より事件は起こっていないことでしょうね(苦笑)

「ロスインゴファンへのプレゼント」というつもりだったのかもしれませんが、ロスインゴファンとて新日本プロレスファンなのですから何かが起こることを楽しみにしていたと思うんですよ、あれだけ煽ったのですから。
そもそも、ロスインゴを推すなら内藤にIWGPを!ってファンは思っているでしょうし、この試合でも内藤が負けることが一番内藤にとって美味しい展開なんですけどね・・・そこからの内藤の天才的な切り返しをどうするのか?を内藤ファンは見たいわけですから。

ただ、この試合が何かしらこの先に繋がることで意味が変わるかもしれません。
それを期待しつつ、個人的ベストバウトのBUSHI・鷹木・金丸・デスペラードの試合を半身浴でもしながらもう1回見たいと思います。

あ、MVPは蝶野さんの「こいつら振り込め詐欺グループみたいだな」真壁さん「ほんとだよなぁ」というわけのわからない会話に1票。


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