全世界が注目したグレート・ムタvs中邑真輔の一戦。
声も出ないぐらいに集中して没入して見させていただきました。
裸眼なのにVRより没入できた世界観には驚いてしまいました。
一応30年プロレスを見ているわけですから、過去の記憶とか慣れとかマンネリとか色々なことがプロレスを見る時の邪魔なフィルターになってしまう世代の私なんですけど・・・関係なかったですね。
中邑真輔の入場、グレート・ムタの入場、試合中の様々な出来事、試合後のマイク、そしてムタに肩を貸した中邑真輔が顔をくしゃくしゃにして引き上げていく・・・
全ての瞬間が全て最高のエンターテイメントであり、全ての瞬間が最高のプロレスだったなと。
武藤敬司選手の言うパッケージとか作品という意味がここへ来て本当に100%理解できたのかなとも思いましたし、武藤敬司からプロレスに入った小学生の私が今年43歳を迎えるという時間を使ってようやく本当の意味で武藤敬司を知ることができたのではないかと。
試合中の中邑真輔は花道ラリアットや腕十字からのフィンガーロックと、グレート・ムタが得意だった技を披露していくなどしましたが、試合後には「大好きだったんですよ。ガキの頃」と涙を流しながら「自分のアイドルだったグレート・ムタ」への気持ちを言葉にしました。
ここでもう涙腺崩壊ですよ。
そんな大好きなグレート・ムタの口から毒霧を自らに吸収し吹き付けてからのキンシャサで勝利した中邑真輔選手ですが、何が凄いって「この二人の間には直接的な大きな歴史はIWGP戦とアントニオ猪木という共通点ぐらいしか無い」ということなんですよ。
これがヤバいんですよ。
物語を1シリーズ使って構築しても、何年越しの物語の結末でもここまでの空気感と感動は作れない中でこの試合の中の1つ1つの動きに意味を込めて意味が生まれて解釈が生まれるってとんでもないことです。
そして中邑真輔はグレート・ムタの毒を得てまたWWEで戦っていくわけですし、世界のスターとしての何かを伝承したということになります。
アントニオ猪木さんも我が弟子がこんな最高のエンターテイメントを見せたことに喜んでいるのではないかと思いますし「これは一本取られたな」と悔しがっているのではないでしょうか。
一部...まぁ私もですが中邑真輔の新日イッテンヨン参加を期待していた身ですけど、これはもうイッテンヨンに来る必要性は全くありませんね。
ここで中邑真輔の今回の来日は完結するべきですし、中邑真輔がイッテンヨンに来たところでグレート・ムタ戦以上の何かがあることはありえませんもん。
これは女々しいこと言ったり邪推したり妄想することすら失礼なレベルなのかなと(新日参戦という空想に対して)それぐらいの試合を見せていただきました。
本当に感謝と感動しかありません。
が・・・これで穏やじゃないのは他団体でしょう。
じゃあ自分たちはこれを超えていかないといけないということになりますからね、それが難しくても。
元日からプロレス界の歴史に残るインパクトを残されてしまった中で、これを現状の手札で越えようと思うと「過激さ」に振り切ってしまうしかないわけですよ。
もしくは「試合時間の長さ」とか。
ただそういうものがプロレスのエンターテイメント性を表現する上で実はそこまで重要でも無いということを表現されてしまった状況になるわけですから...特にイッテンヨン何かではケニー・オメガとウィル・オスプレイは相当過激な試合を極限までやるのではないかという心配も生まれますし、オカダ・ジェイなんて90分ぐらいやって対抗するんじゃないかということも考えてしまうんですよね・・・
そうじゃないとベストバウトも取れないでしょうし、なんというかプレッシャーを与えた試合だったと思うんですよムタ・中邑真輔は。
ただ表題にもあるようにエンターテイメントとしてこれを超えるのは難しいと思うのです。
1試合単位で見ても興行としても。
この元日決戦、メインだけでも他の全体会を食うぐらいの試合でしたが拳王vs清宮のGHCタイトル戦はとてつもなく激しい試合になりましたし、これだって年間ベストバウトが狙えるような試合でした。
その他、GHCタッグ戦の小島・杉浦vs丸藤・KENTAの試合も相当な名勝負となりましたし、他の全試合も含めて好試合の連発でした。
時に私の身の回りの新日ファンから聞こえてきたのは「ノアジュニアすげーな」という声や「打撃の重さが全然違う...」というもので「ノアも追いかけようかな」という声がかなり多かったですよ。
この打撃に関してはこちらは見ている側の素人ですし、マイクの違いとかもあるとは思うのですが確かにノアを見ていて思うのは「打撃の音が違う」ということですね。
そこだけで判断すると他団体が打ち合いをして最後の一発に重いのを入れる時のその重いものレベルで常に打ち合っている感じがするというか・・・
馳浩選手に打ち込む中嶋選手の蹴り1発を見ても、あれ他団体ならもうちょい緩く入れて逆に馳さんに怒られるんじゃないの?って感じでしたし、逆に馳浩の代名詞の逆水平チョップにしてもそこらの現役バリバリの選手より重いんじゃないの?って感じでしたからね。
ただ、重要な問題として「こんな試合と大会を見せつけたノアが新日に並べていない現状」があることですよ。
今回はグレート・ムタvs中邑真輔ブーストで超満員でしたし、ABEMAで視聴した他団体ファンも多くの人が目にしたと思いますが、これで客足が伸びてこないといよいよ戦略ミスがどこかにあることが確実になるわけですよね。
プロレスファンを増やすには「プロレスファンじゃない人を取り込む」「プロレスファンを他団体から持ってくる」という二択になるわけですが、まず前者というのはめちゃくちゃ難しいです。
私だと競馬本の著者という立場から「新規競馬ファンを掴んで本を買ってもらう」ことは当然ほぼ不可能に近いですから「元々の競馬ファンをターゲットにする」「他著者さんやYouTuberのファンを奪う」という方向でしか考えていませんが、これは当然のことです。
ではノアがファンを増やすためには?当然新日本プロレスファンを奪うしかないわけですよね。
ただこれも難しいところがあって、まず今の新日本プロレスファンを大きく分けると
・長年の新日本プロレスファン
・レインメーカーショック以降のファン
・ロスインゴ誕生以降のファン
このようになると思うのですが、下2つは新日本プロレスにプロレスファン歴0から入った人が多いので「新日本プロレス推し」であることを動かしにくいです。
私自身でも新日本プロレスから30年前にプロレスに入っているのでやはり何があろうと新日本プロレスが一番の推しであることは簡単には崩れません(でも他団体も見ますけど)
なのでこの2つに関しては「新日本プロレスの動きが無い時に見てね」というスタンスで行くしかないので強固なファンにはなりずらいと。
ではプロレスそのもののファン歴が長い人はどうか?
これ、新日本プロレスに限っていえば「ノアアレルギー」を持つ人が未だ多いです。
私はね、もうそのアレルギーはこの4年ぐらいである程度治りましたよ(笑)
だってリング上が面白いし、ファンの人も昔と違いますから。
でも・・・なんですよ。
90年代後半~2000年代ですか、例えばプロレス関連の掲示板1つ取ってもmixiとかもそうだったかな、兎にも角にも新日本プロレスファンはノアファンにマウントを取られてボロクソ言われていたわけです(苦笑)
でもノアも面白そうだと思って会場へ行けばファンが怖い・マナー崩壊している時期もあった、そんなことを経験しているわけです。
あ、近年でもそうですよ。
鈴木軍がノアに行っている時とか「あら、ノアファンは変わらねぇなぁ」と思うぐらい危険なファンも多かったですからね・・・鈴木軍に殴りかかったり試合を邪魔したりツバを吐いたり、限度を超えた野次を入れたり・・・。
なので昔からということになっちゃいますが「ノアには興味あるけどノアファンが嫌い」ってプロレスファンが少なくない点、この印象を変えないと厳しいと思うんですよ。
多分プロレスラーの中にもいますよ「ノアに出てみたいけどファンが嫌」って思っているケースは。
でも、今現在のノアファンの人はそんな人たちじゃないという現実もありますから、そこを見せていく方がいいのではないかと・・・でもどうやって?というところですよね。
例えばサッカーでもそうで、浦和レッズサポは過激じゃないですか?
で、僕はグランパスサポですが瑞穂競技場で試合があった時に試合後にレッズファンがサッカー関係なくバス停に座っているご老人に「名古屋雑魚!」とか言って取り囲んでいた時にブチギレて大喧嘩したことがあるんですけど(もう10年以上前の若気の至りですよ、今なら警察呼んで遠くから見てます)あれを見ちゃうと、本当にサッカーが好きなだけで普通のレッズサポの人でも「この人も怖い人ちゃうか?」とか思っちゃうんですよ。
人間の記憶って、、、悪い印象は特に消えないんですよ。
ただ現時点で「ノアを見てみようかな」という思いが生まれている人はめちゃくちゃ多いはずですし、ここまでの興行をしたことによって割りと逆にラストチャンスっぽい状況になっているとも言えるんですよ。
なので選手・ファン含めてSNSの目につくところで良いムードにしておくことが重要になるんじゃないかな?と思ったですね。