夏の終わりとともに

G1クライマックスはオカダカズチカの優勝で幕を下ろしました。
試合全体で一番印象的だったのは、オスプレイの「過去にオカダが負けた試合を研究した」という話からのハイフライフロー、スタイルズクラッシュ、Vトリガー、片翼の天使を出していくという、恐ろしいまでのアイデア・クリエイティブなシーンでしたねぇ。

だって、この手法って過去に無いですよ。
音楽にしても映画にしてもプロレスにしても漫画だって何でもそうで、どうしてもどこかが過去に被るというのは歴史が進んでいるから仕方ないこと。

でも、その中で30年プロレスを見ている私が見たことがない光景でした。
歴代のボスの技を使うというBULLET CLUB的なこととはまた違うベクトルですからね。

欲を言えばデスティーノも欲しかったところですが、でもね、これってオカダカズチカが相手だから成立するじゃないですか?

オカダカズチカが絶対王者的で負けたことがめちゃくちゃ少ないからできる見せ方ですもん。
仮に相手が内藤哲也、棚橋弘至だったら印象的な負けの試合も相手も腐るほどいるわけですからね。

オカダカズチカという絶対王者が相手だからこそ、オスプレイのアイデアが通用したあの光景は絶対王者がいる団体・時代しかできないことです。

だから他団体の選手は「これかっけーけどやる相手がいねぇ!」でしょうし、新日本プロレスの他の選手は「そのアイデアがあったか・・・」でしょう。

ただ・・・

こんな一度しかできない見せ方をオスプレイが出しましたと。

それで勝てなかったというのは・・・

新日本プロレスオカダカズチカ物語というドラマのエンディングを見たかのようで、もうNEXTへの興味が薄れますよね逆に(苦笑)

というか、というか、、、あの見せ方はオスプレイが勝てる時に出してほしいですよね、欲を言えば。勿体ないなんてもんじゃないですもん。あれを焼き直しして今後また使うほどオスプレイにセンスが無いわけがないですし。

棚橋弘至・ケニー・AJに力を借りてまでオスプレイが負けたオカダカズチカって、もう抜けすぎちゃって何を応援したらいいのか?なんですよ。

そりゃね、僕はIWGP論争の時にオカダカズチカを支持していましたし、今でもIWGPに関してはオカダカズチカが一番適した存在だと思うのです。

何なら大好きなレスラーですよ、過去のブログを見ていただければめちゃくちゃ伝わると思います。

何ならベルト統合の時にオカダカズチカだけがIWGPに対して誠実だったと思いますし、あれだけでも一生付いていく感じなんですよ。

ただ、それとこれは別で(笑)

先日も書きましたけど、30歳までにほぼ全てをやり遂げている上に同世代のライバルもいない。
ライバルが出てきたと思ったら完膚なきまでに勝利して大差の戦績になりライバルでもなんでもなくなるという現実。

オカダカズチカが目標として超える選手もいなければ、オカダカズチカを追って噛みつく選手もいないし、いたとしても勝てない。

もうオカダカズチカを見ていく楽しみって、負けることぐらいなんですよね。

そして、その千載一遇の「負け」好機だったのがどう考えてもこの優勝決定戦だったわけで、数少ないオカダカズチカと互角に戦ってきた棚橋弘至・ケニー・AJという「オカダカズチカ自身の歴史+オスプレイという怪物」を融合した相手になら、オカダカズチカ史上最高に美しい敗北と今後のオカダカズチカへの楽しみが生まれたと思うのです。

が、オカダカズチカの歴史+オスプレイの融合ですら、今この日・この瞬間のオカダカズチカは強い、父となったオカダカズチカはより強い・・・って、もう金の雨を降らすレインメーカーではなくて相手の夢と希望を溶かしていく酸性雨を降らせる怪物ですよ。


そして、試合後にG1優勝者の得る権利書システムについて言及した時には明らかに「おっ?」という空気に会場がなっていることは映像から伝わりましたし、世界中にいる新日本プロレスファンの仲間たちも「おっ?」って思っているだろうなと。

オカダカズチカが作った権利書システム
私は毎年この権利書システムがG1の価値を下げているのではないかと書いてきました。
なぜなら「G1という夏の最強を決めるリーグ戦は、いつの時代もIWGP王者と同じぐらいの価値があって、G1優勝者はG1王者というベルトを持っているようなものだ」から。
だから「権利書なんて無くてもG1王者はいつでもIWGP王者に挑戦できるし、なんならIWGP王者から逆指名するものだろ」と思っているからで、それぐらいまでにG1というものを特別視して第一回から見てきました。

そんな思いを抱えている私の前、画面の中のオカダカズチカは「G1の価値」について語り始めたので「これは同じ気持ちか!?」「自分で作った権利書をやっと抹殺してくれるのか!!」と、その決断とG1へのオカダカズチカの敬意へ感動して涙が流れそうになった・・・その時。

「G1の価値を上げるために、防衛戦とかやらずにドームメイン直行で、確定ってことで」

的な言葉が聞こえたような気がして、自分の耳がおかしくなったのか?と思っていたのですが、何度聞き直してもそんなテイストのことを言っている。

でも、勘違いだろう。言い間違いだろうと、そう思っていたところ・・・一夜明け会見でもそう言ってました。

リーグ戦で負けているジョナに対しても「ジョナには負けているので、その権利を賭けて闘うっていうことはもちろんないですし」とさらっと。

で、お子様が生まれたという報告→育休を貰ったという報告→「では、イクメンとしてのオカダ選手期待しております」というマスコミのリアクションで終わり。


よくわからないまま、G1の価値を上げるためにオカダカズチカがこの時点でドームメイン確定って・・・IWGP王者より立場が上になってしまったわけです。
いやー、そういうことじゃないんじゃないっすよね・・・
G1優勝者・G1チャンピオンの価値を上げることって、権利書なんてものが無くても最強の称号をもっているIWGP王者と同等の価値がある存在ってことじゃないのかよと。

そして、G1ってのはくすぶってる選手や若い選手が大ブレイクすることも「当たり前」だった大会ですが、近年はもうずっとトップの選手がよりトップであるためのような結果が続いているわけですが「G1優勝=翌年のドーム確定」って権利になってしまうとですよ、もう優勝できる選手なんて数えるほどしかいない・・・ですよね。

最終日なんて全体を通してノーサプライズというサプライズがありましたが、その大会が終わった時点で今後のG1のノーサプライズ宣言をされたわけですからこれはキツイ。


オカダカズチカ選手は本当に好きなレスラーですし、その他素晴らしい選手ばかりなのに50周年を守備固めで進んでいる新日は少し勿体ない気がしますし、攻めの新日が見たかったという思いがね、モヤッとするというか・・・あんな凄い優勝決定戦を見て感動し、勇気と元気をもらい、やっぱりプロレスってスゲーんだよ!と再確認し、めちゃくちゃ興奮したのに、やっぱり夢と希望が抜け落ちている感覚なんです。

まぁでもそれはどの団体も今はわりとそうかのかなぁ。
調子が悪い団体はユニット系はコロコロ動かすけど、トップを変えて致命傷になるといけないので大胆なことはできないし、調子が良い団体は維持のために守らないといけない。

うーん。全部コロナ禍が悪いのかもしれないよね。
エンタメから戦う力を奪った。現状維持という戦いを余儀なくされたのかもしれない。

あ、もちろんだけど、こっちが勝手に夢や希望をくれ!って思っているだけで無責任なものなんですよ(笑)ピーチクパーチクと鳥の巣の中で「餌をくれー」って30年やってきて「あれ?最近親鳥が夢のソテーとか希望のパエリアとかを食わしてくれないよな」って言ってるだけで贅沢なものですよ。

それは理解しているのですが、
個人的にはちょっとね、プロレスというジャンルから夢と希望を感じてもいい匂いを感じるまでは、このブログをお休みしようかなと思っています。

もちろんプロレスは大好きなので見続けますけどね。


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