先日、鈴木みのる選手のインタビューを読んだ感想をブログに書きました。
その中で最も衝撃が走ったのは「プロレスファンの無責任な発想から団体は潰れていく」ということと「プロレスファンのこうなればいいなというアイデアは儲かる姿ではない」という発言。

だからこそ「プロレスファンのプロレスラーち同じ目線でプロレスなんかできねーよ」というコメントをしています。

鈴木みのる選手はファンに媚びることもなく、ファンが喜ぶための動きなんて一生しないことでしょう。
たまたま鈴木みのるの選手やりたかったことがファンの見たかったことだった、ということは何度もありますが順番が逆ですからね。
「風になれ!」を煽ることも「ファンがやりたいから」ではなく「自分がやりたいから」」であるはずです。

結果的に鈴木みのるはオンリーワンの存在となりプロレス界を代表するレスラーとして50歳を過ぎてもトップ選手として、スターとして人気を得ています。

一方、ファン側の考えを重視して圧倒的に成功したのが内藤哲也選手だと思います。

ファンが思っていることの中でレスラー側が言いにくいことをバシバシと発言することで「内藤哲也選手はファンの気持ちをわかってくれている!」と支持を集めました。
おそらく「東京ドームでカードが決まっている選手はワールドタッグリーグで優勝しないんでしょ?」というギリギリの発言が一気に状況を変えるきっかけとなった瞬間ですし、当時まだロスインゴ内藤哲也にはブーイングもありましたがこの辺りからファンのリアクションが変化しました。

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内藤哲也はファンの気持ちを代弁しているだけではない

その後もファンが思っていることを発言するというスタイルが続いていきましたが、SNSでの活動が少ない内藤哲也選手ですがネット上にあるファンの声を相当リサーチしていたと思うんですね。

ただ、内藤哲也の思うことがファンの思うことであったという順番のことも多くあるはずですし、例えば中邑真輔の退団時の辛辣な発言は「ファンはそう思っていなかったが、内藤哲也の発言を聞いたことで気がついた」というケースもありました。

今日が、中邑の、新日本プロレス、ラストマッチ。そんなの知ってるよ。てかさぁ、てかさぁ、新日本プロレス的に、中邑が海外の某団体に行くことが、そんなにオメデタイことかよ?新日本プロレス的に、新日本プロレス出身の選手が、海外の某団体に行くのが、そんなに誇らしいことかよ?海外の某団体じゃなくて、国内の他団体に行くって話でも、新日本プロレスは、中邑を快く送り出してあげたの?今日と同じように、わざわざ壮行試合とか、やったわけ?中邑が、中邑真輔が、今までこの新日本プロレスに貢献してきたことは知ってるよ。そんなこと、もちろん知ってるよ。でもさ、だから何なの?海外の某団体が、巨大過ぎて、『新日本プロレスは太刀打ちできませーん』って認めちゃってるわけ?オイオイオイ、この団体は、世界一のプロレス団体を目指してるんじゃないのか?国内ナンバーワンで、もう満足しちゃってるわけ?オイ、そんなんだったらさ、中邑真輔退団と同時に、“King of Sports”なんて名乗るの止めた方がいいんじゃないの?コレは、コレは、新日本プロレスを応援してくださる皆様、そして、中邑真輔に対して言ってるんじゃない。コレは新日本プロレスに対して、俺は言ってるんだ。海外の某団体のご機嫌を伺うような対応しかしない新日本プロレス、ちょっと俺はガッカリだぜ。まぁさ、今日の後楽園ホール大会をもって、中邑はこのリングから去るんでしょ?中邑に一言言うことがあるとすれば、アディオス、ナカムラ

感動ムードに騙されていましたが、内藤哲也選手のこの発言こそ本音であり新日本プロレスファンが気が付いていなかった気が付かなかったフリをしていたことじゃないですか。

また、この発言があることで仮に中邑真輔が新日本プロレスに戻ってくることがあればそこに真っ先に立つのは棚橋弘至でもオカダカズチカでもなく内藤哲也となる状況になることでしょう。

このコメントでロスインゴ内藤哲也としての完全体となったこと、やはりこれは新日本プロレスファンとしての内藤哲也が存在するからですし、ファン目線であることの強さを証明するものでもあります。

「ファン目線」はKENTA選手も同じだと思うのです。
一見するとファンと敵対していましたが、そもそもKENTA選手はWWEを退団して新日本プロレスのG1に参加した時は「おお!KENTAだ!」というファンのリアクションを浴びていました。

それがコンディション不足なのか「みんなが覚えているKENTAとは違う」状態だったことから批判が増えてきて、BULLET CLUB入りしたことで一気にヒールの道へと進みました。

そこからはコメントなど試行錯誤しながらファンのリアクションが大きかったパターン(イメージビデオ風+相手選手を小馬鹿にする)を使うようになり、KENTA選手を批判するファン側の目線に立って「より批判されるKENTA」を作り上げました。

ファンと敵対していることがファン目線なのですから、これは凄い戦略だと思います。

そう考えるとファンを無視することもファン目線になることも成功するケースがあると言えるわけですし、意見が違うレスラーがいるからこそプロレスは見ていて面白いのではないかと思うわけです。

棚橋弘至の「いつからプロレスラーはそんなに行儀がよくなった?」を思い出した

棚橋弘至が復帰した令和元年。
ザックに負けてからの復帰早々に「IWGPを狙う」という発言をしてボロクソにファンから叩かれたことがありました。

そんな時に出た言葉が「いつからプロレスラーはそんなに行儀がよくなった?」という、僕の中では棚橋弘至の令和最初の名言。

ファンの声に真っ向勝負するという形はファンに媚びることでもなければ、ファンの声をKENTA的に裏から利用するものでもなく「勝負」という形での行動でしたが、僕はこの棚橋弘至選手の考え方というのも大好きでした。

棚橋弘至選手の「愛してまーす!」は元々ファンが全身鳥肌でブーイングするぐらいの拒絶反応を起こしました。
最近の棚橋弘至選手だけを見ていると「ファン目線になってくれる強くてカッコいいエース」かもしれませんが、本質的にはファンの望まないことをやり続けた結果、それをファンが望むことに変えてしまったということからエースの道が始まっています。

鈴木みのる選手が「ファンは応援だけしてりゃいい」「別にどうでもいい、本物がわかるやつはついてくる」という考え方なのであれば棚橋弘至選手は「ファンが理解しなくても理解させてやる」「絶対に自分のやり方で振り向かせる」という考え方なのではないでしょうか。

そういう部分では棚橋弘至と内藤哲也、棚橋弘至と鈴木みのるであれば鈴木みのる寄りではありますが、やはり棚橋弘至は「振り向かせる」という意思が強かったからこそ暗黒時代を立て直す最大の功績を手にしたのではないかと思います。

高橋ヒロムもファンに真っ向勝負をするレスラー

高橋ヒロム選手のことを「女性ウケする可愛い不思議ちゃんを演じている」と言う人もいますが、それは戦略としてあっても長く続くものではないですし最重要なことではありません。

高橋ヒロム選手が重要としていることは「危険なことをしないでくれ」「安全な技を使ってほしい」という声に対する真っ向勝負だと思います。

ファンがこうしてほしいからということで動くのではなく、自分がやりたいプロレスをやるだけを徹底しています。
そして「ファンに理解してほしい」ではなく「ファンに自分がやっているプロレスを見せつけた上で判断すればいい」という印象ですので、鈴木みのる選手と棚橋弘至選手の中間のようなスタンスに思えるのです。

このように考えるとやはりレスラーというのは個性的でファンとの向き合い方がそれぞれ違います。

だからこそ僕らプロレスファンはレスラーを真剣に応援できるのだと思いますし、逆に言えばそこがブレているレスラーは支持を集められずチャンスを与えられなくなることに繋がるとも言えるのではないでしょうか。

思い出した「後出しジャンケン」というワード

話は内藤哲也選手と鈴木みのる選手の2018年4月の両国へ飛びます。
この時に鈴木みのる選手は内藤哲也選手に対して辛辣なコメントを残しました。

それからよ、内藤哲也、それを支持するファンのアホども。ハッ。何がトランキーロだよ? おまえらよく聞いてみろ。アイツの言ってること、共感できる? 俺は全部知ってる。なんでだ? なんでかわかるか? なんで客の支持を集めるか、知ってるか? それはな、アイツが言うのは、全部、“あ・と・出・しジャンケン”だから。あとづけだから。そう! 巧妙な手口を使う詐欺師、ウソつきの占い師。霊能力のなんかもってない霊能力者! そいつらが使う方法とまったく同じなんだ。そう、全部、あとからあとから。人が出した答えに自分を乗せてるだけだ。だから、あたかも最初からわかっていたかのように聞こえるだけだ。それにおまえら、だまされているだけだ。だから、アイツらのファン、ガキが多いだろ? なんでか? だましやすいから。

コメントの文字だけを見ると、KENTA選手以上にロスインゴファンを煽っている強烈なものです。
ただここで鈴木みのる選手が最も言いたかったのは「人が出した答えに自分を乗せてるだけだ。」という部分ではないかと思います。
むしろ後出しというより人が出した答えが前に出てくる前に先回りして言葉にすることで、ファンは「俺と内藤哲也は同じ意見だ!」と嬉しくなりファンになるという手法が確かにこの時期露骨に使われていました。

そして4月27日の広島大会での鈴木みのるのコメント。

「内藤よ、相変わらずだな。『あなたが……』『ほら、これが……』『あれで、これで、それで……』……ああ言ったらこう言う。そして一つひとつ、ひとつずつ説明を求める。そして自分からは何の説明もしない。そう、自分が説明できるのは、最初っから用意したものだけ。オイ、これ何かわかるか? 何かわかるか? オタクとガキの理論なんだよ。オイ、『納得いかない』『こんなのは俺が許さない』『こんなもの許されていいんですか、皆さん?』……自信がないから周りを煽る。煽って仲間を見つける。そして大勢で攻めようとする。そう、これこそが、民主主義という名をかぶったガキの理論だ。そう、内藤哲也、ガキのカリスマ……。青いんだよ、お前。寝そべって相手を挑発する、ツバをかけて怒らす、屁理屈こねて相手の痛いトコを突いて言い返せなくする……そう、俺がもう10年以上前にすべてやってきたこと。

この時に鈴木みのる選手がコメントした『そう、俺がもう10年以上前にすべてやってきたこと。』というワードを、先日の鈴木みのる選手のインタビューを見て思い出しました。

内藤哲也を全否定している上で「俺もやってた」と発言しているというのは「お前の歩いている道は俺の後ろだ」と言いたかっただけかもしれませんが、前後関係の発言を考えればそんな主張のためだけに使った言葉ではないでしょう。

自分が全否定していることを自分は昔やっていたというなら、何かしらの後悔や失敗があったからのはずです。
それを内藤哲也に心配しているから言葉になったのか、それとも内藤哲也はその手法で成功しているジェラシーなのかわかりませんが、何にしてもプロレスラーとはリング上の戦いだけでなく、ファンの扱い方やファンとの戦いというところでも主張が違うわけじゃないですか。

主張が違うからこそ面白い、だからこそプロレスは面白いものだと思いますし、鈴木みのる選手の「このままだとこの会社潰れるぞ」という発言の衝撃は大きかったですが、かといって全員が鈴木みのる選手と同じ考えになったら面白くないわけじゃないですか。

そういうことまで考えさせてくれた鈴木みのる選手のインタビューは本当に面白かったと思いますし、この鈴木みのる選手のインタビューに対してのアンサーを・・・必ず読んでいるであろう内藤哲也選手に出してほしいなぁと思いました。


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