愚行録

オープニングのシーン。
主人公がバスの中でおっさんに「老人に席を譲れ」と言われる。
立ち上がる主人公は足を引きずっておりバスの中で転倒。
そしてバスが停車、主人公は足を引きずったまま降りる。
車内では注意したおっさんが気まずそうな顔をしている。

バスが去っていくと主人公は普通に歩き出す。

このシーンで「何だこいつ!」と思うのか「何かスカッとする」と思うのか。
一昔前なら前者が多いのだろうけど、偽善者というか「けしからん!」と叫びながら
無抵抗な人間を金属バットで殴ることだけに人生をかけている人が増えている現在だから
後者になる人が多いような気もしなくない。

そんなオープニングが終わり、物語がはじまるのですが
1時間30分ぐらい、じっくりとパズルが完成に近づいたところで
そのパズルが裏返り、全く別の絵になるような映画です。

何でしょうね、登場人物全員が人間らしいというか
内面がドロドロしていて嫉妬や妬みや恨みを持っていて
ただただ暗い、ポジティブさの欠片も無い素敵な映画でした。

妻夫木聡さんの演技もいいですが、満島ひかりさんの演技に引き込まれます。
この人は・・・なんでしょうね。見る人によっては演技が下手とかも言いますが
愛のむきだしを見たときも同じ印象ですけど、言葉1つ表情1つに不思議な魅力があるなぁと。

誰にどういう感情で話しているのか?とか、相手が写ってなくてもわかる。
言霊みたいなエネルギーを放出しているようにいつも感じます。

後味が悪い映画ですが、この苦味は僕は好きですね。

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