ベストバウト級

三冠戦に世界タッグに加えて爆破マッチまであった全日本プロレス八王子大会。

豪華カードの中で一番印象に残ったのは世界ジュニア戦、王者田村男児vs挑戦者岩本煌史の試合。

王者田村男児に対して「王者とはどう戦うべきか」を教えるかのように戦い圧倒する岩本煌史と、どんな厳しい技を食らっても立ち上がってくる田村男児の姿には「王者と挑戦者が逆」のように見えた人も多いかと思います。

ただ、それで良かったのがこの試合。

ジュニア絶対王者として君臨していた岩本選手が全日本プロレスを退団してからというもの、一時期は迷走した全日ジュニアを立て直そうと必死だった選手の1人である田村選手。

その田村選手が急成長をして世界ジュニア王者となり、岩本選手も「世界ジュニアというより田村男児が持っている世界ジュニアに興味がある」とまで言わせたほどまで田村選手は大きな存在になっていました。

田村選手も「岩本煌史に勝ったことがない」ということから挑戦者に指名しているわけですから、試合のテーマとしては「田村男児の岩本煌史超え」となります...表向きには。

ただ本質的な部分では岩本煌史が全日本プロレスジュニアの絶対王者としてやり残したことを田村男児に伝えること、でした。

それがこの試合で起きた「王者岩本煌史・挑戦者田村男児」に見える試合だったのでしょう。

個人的にはここ最近のプロレス全体でもベストバウト級だったと思いますので、試合に関してはその目で見てほしいなと思いますが、凄い試合だった上でどちらにも大きなプラスがあったように思いましたよ。

田村男児選手はこれから時代を作っていく上で、この試合で得たものは大きいでしょう。
それに「田村男児の代表的試合」としてこの試合は名刺代わりになるはずです。

岩本煌史選手は「全日本プロレス時代の岩本煌史は成仏できた」と話したように、やり残していたモヤモヤを解消することができましたし、これまた岩本選手にとっても代表的な試合が1つ増えたのではないでしょうか。

が、少々残念なことが1つ。

試合後に岩本選手は「byebye AllJapan」と全日本プロレスに別れを告げました。

フリー選手として活動の場を広げている岩本選手ですが、ファンからすると「岩本が全日本プロレスに帰ってきた」という気持ちになっていたと思いますし、こんな試合を見せられてしますと・・・再戦も見たいし、青柳亮生やライジングHAYATOや井上ら若い選手との戦いをもっとやってほしいと思うでしょうからね。

さて、孤高のアーティストが次に向かう先は?

この試合を目にしていれば、新日本プロレスやノアでの戦いも見たくなりますよね・・・

岩本煌史選手に欠けているものがあるとすれば『同世代のライバル不在のプロレス人生』の印象が強いこと。

新日本プロレスやノアに行けば、パズルのピースが1つ埋まると思うのですが。

世界ジュニア4度戴冠で年齢も若い岩本選手、そろそろ別のメジャー団体に出てきて『世界は広い、だけど日本も広いんだぞ』ということを見せつけてほしいなと思うばかりです。


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