ノアが全ての獣を方舟に受け入れたとき
獣達はノアに服従した。
ユニコーンだけがそうしなかった。
ユニコーンは自らの力を信じ
「私は泳いでみせる」と言った。
四十の昼と夜の間、雨が降った。
鍋の中のように水は煮え立ち
あらゆる高みが水に覆われた。
そして方舟の舷側にしがみついていた鳥たちは
方舟が傾くと沈んでしまうのであった。
しかし、かのユニコーンは泳ぎに泳いでいた。
だが鳥達がユニコーンの角に止まったとき
ユニコーンは水中に没してしまった。
だからユニコーンは今日ではもう存在しないのだ。
『小ロシア民話』
傲慢、わがまま、そんな伝説の多いユニコーン。
ただ、この小ロシア民話に書かれている
ノアの方舟とユニコーンの話は個人的に好きです。
賢い行動とは言えないけど
生き方としては好き。
なんかね、水中に沈んで行く時に
こいつは自分の行動を後悔してないと思うんだよね。
もし後悔していることがあるとするなら
自力で戦ったという事ではなくて、
角に鳥が止まったぐらいで沈んでしまったこと。
それぐらい平気である自分を作れていなかったという
己の過去に後悔をしたぐらいじゃないのかな。
ユニコーンの角は解毒剤になったって話もある。
毒を治癒することもできつつ、
非常に強力な自慢の武器にもなる。
でも、そんな物があったがために沈んで行った。
しかし、それが無かったらユニコーンは
ユニコーンとして生きてはこれなかった。
何となく最近これのエピソードが
心に刺さるんだよね。
角だけに。